<aside> 💡 負担重量・斤量

負担重量とは、競走馬がレースにおいて背負わなければならない重量のことである。騎手自身の体重とその服やプロテクター、ブーツなどの装備、鞍などの馬具、そして重量調整用の重りからなる。ヘルメットや鞭は計測対象に含まれない。  斤量という別名は尺貫法時代に生まれたもので、重量の単位が「斤」であったことに由来する。現在の日本ではkgが唯一の単位だが、ヤード・ポンド法が現役の国々では斤量表示もポンドである。もともとは「世界の有力馬をひとつのハンデ戦に出走させるならどれほどの斤量を背負わせるか」という基準で計算されるフリーハンデレーティング、例えば「ワールドベストレースホースランキング」やそれに準じて国内で馬に付けられるレーティングも単位はポンドであるが、現在の日本では無単位のスコアとして解釈される場合が多々ある。  騎手によって体重による重量負担が異なる不公平を埋め合わせることが、わざわざ重りを付けてまで重量調整を行う理由の大元だが、実際のレースではこれに加えて「強いと目される馬の負担を重くして、成績の出ない馬や不利な条件を持つ馬がある程度競り合えるようにする」という目的もあるため、ほとんどのレースでは馬によって異なる斤量が課される。  「不利な条件」はいくつか考えられるが、明示的に検討されるのは以下の項目となる。

またそうした条件を抜きにして、その馬の強さがどれほどかを測る尺度としては以下の項目が参照される。

これらの項目をもとに、ハンデ戦ではハンデキャッパーが人力で負担重量を決定し、その他の形式では規定に沿って自動的に算出される値がそのまま負担重量となる。  ハンデ戦は人間の裁量が大きい分、上述の「強い馬を重くして平等に近づける」という意識が強く出やすい。多くの馬が一時にゴールへ殺到し、着差が小さい接戦となるのがハンデキャッパーにとっての理想であるとされる。このため強い馬があっさり負けることも少なくなく、相対的に波乱が起きやすいと言われている。

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重賞・リステッド競走における年齢と負担重量決定法の対応関係

本表は2024年度の競馬番組に基づくものであり、近年ブラッシュアップがなされて番組構成の整理が進んだ成果である。

GⅠ GⅡ GⅢ リステッド 障害GⅠ 障害GⅡ・GⅢ
2歳 馬齢 馬齢 馬齢 馬齢ベースの賞金別定 なし なし
3歳 馬齢 馬齢 ラジオNIKKEI賞(ハンデ)を除き馬齢 クラシックトライアル(馬齢)を除き馬齢ベースの賞金別定 なし なし
4歳以上 定量 グレード別定・ハンデ グレード別定・ハンデ 賞金別定・ハンデ 定量 グレード別定
3歳以上 定量 札幌記念・阪神C(定量)を除きグレード別定・ハンデ グレード別定・ハンデ キャピタルステークス(グレード別定)を除き賞金別定・ハンデ 定量 グレード別定

<aside> 📖 ハンデ戦以外の負担重量決定の方法

前述のハンデ戦を除けば、斤量計算のルールは本来、馬の年齢に応じてJRAの規則で定められた斤量を割り当てる馬齢重量戦(略して馬齢戦)が基本であり、番組において特に記載がない場合はすべて馬齢戦であると定められている。性別と年齢が同じ馬は、定められた期間(2歳は2期に分かれ、3歳は通年)のどの馬齢戦に出ても(減量騎手などの特殊条件がなければ)同じ斤量を背負う。  ただし3歳馬や4歳春の馬が年長馬と対戦する場は、未熟な前者の斤量を成長時期に合わせて柔軟に軽減するために馬齢は用いられず、馬齢戦は2・3歳の世代戦に限られている。

上記の規則とは別途に、競走ごとに馬齢のほか収得賞金額や勝利度数などの追加条件を定めて斤量を加減するものが別定戦の定義となる。ハンデ戦をより自動化したものとも言えるが、収得賞金額などの客観的な実力差の指標が条件馬の間には存在しえない都合上、こちらの設定はオープンクラスに限られる。  実務上は、世代限定戦では馬齢戦と同じ馬齢重量に番組で特に指定する追加条件を上乗せする形が基本である。また世代混合戦では、あらかじめ基準重量(5歳以上牡馬)と施行時期・距離ごとの若い馬の斤量軽減幅(アローワンス)がJRAの規則として定められており、やはり番組において特に指定されるのは追加条件の部分のみとなる。  馬齢戦や後述の定量戦よりも幅広く上位を狙うチャンスを与えつつ、ハンデ戦ほど極端な平等主義にもならない(そしてハンデキャッパーの手間も減る)ことから、オープンクラスの多くの競走で採用されている。  重賞においては近年すべての別定戦が、馬齢・性別のほか勝ち鞍のグレードに応じて斤量を定めるグレード別定となっている一方、リステッドの大半は収得賞金額をベースとして、一定額を超えると特定の超過幅ごとに斤量を加算していく(以前は重賞で、加算が1回までと定められているものもあった)賞金別定である。上の表において「馬齢ベースの賞金別定」は馬齢重量を起点として収得賞金による斤量加算が行われることを表し、単に「賞金別定」である場合は古馬の基準重量に同様の加算が行われることを表す。  なお中央競馬において、負担重量に下限はあっても上限は特に定められていないが、現存する賞金別定の場合は超過幅ごとの加算の回数も制限されていないため、稼げば稼ぐほど青天井のごとく斤量が増加してゆくことになる。(後述

定量戦は別定戦のうち、条件が馬齢・性別だけであるものを指す。「定量」という表現からは全馬が同じ斤量を背負うかのようなイメージを抱かないこともないが、あくまで別定戦との対比であって、実際の数値を並べてみると3歳馬の馬齢アローワンスが入る分だけ馬齢戦よりも「不定」の印象を与える。  グレード・賞金別定が個別の馬の実力・実績差を加味するのに対し、こちらは純粋に世代と性別の溝のみを埋めるものとなっている。条件戦にも適用可能で、春季の4歳以上・夏季以降の3歳以上条件戦は大半が定量戦である。また真に実力のある馬に上位を争わせるべきとの考え方から、すべての古馬混合平地・障害GⅠと一部の上位GⅡ(札幌記念・阪神カップ)は別定でなくこちらを採用している。  前述のように基準重量は統一されているため、馬齢戦との実質的な違いは3歳馬の馬齢アローワンスがあるかないかという点に限られる。4歳春の一部競走条件を除けば、古馬にとっての馬齢重量は別定・定量戦の基準重量(下表最右列)であり、春季の4歳以上定量戦は古馬の馬齢戦であると考えても大きな問題はない。

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馬齢・別定・定量戦の性齢別基準重量

単位:kg 2歳~9月 2歳10月~ 3歳 4歳1月~5月 4歳6月~
平地牡・セン 55 56 馬齢57、別定・定量~57 別定・定量56~58 定量58、別定57
平地牝 55 55 馬齢55、別定・定量~55 別定・定量54~56 定量56、別定55
障害牡・セン なし なし GⅠ61、GⅡ以下59 GⅠ62、GⅡ以下59 GⅠ63、GⅡ以下60
障害牝 なし なし GⅠ60、GⅡ以下57 GⅠ60、GⅡ以下57 GⅠ61、GⅡ以下58

下表は2024年競馬番組「別に定める事項など」より引用。

3歳時から4歳春にかけては古馬混合の別定・定量戦でアローワンスが適用され、上表下線に該当する競走については、5歳以上(実質的には4歳6月以降)の基準重量に対して下表の規定値分を軽減した斤量(別定戦はさらに加算条件分を追加した斤量)が課される。ただし3歳馬のみの別定戦は馬齢重量に加算条件を足すもので、馬齢戦と同様にアローワンスは適用されない。

3歳以降の牝馬に関しては、同期の牡馬に対するアローワンスが常に2kg設定される。この軽減と障害競走でのアローワンスは上表に反映済み。

下表中のカッコ内は条件戦の数値。

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理論的には45kgなどという軽斤量も算出されうる(後述のように実際あった)が、2019年以降は騎手の健康のため最低斤量が定められており、実際に課されることはない。また、古馬との対戦が3歳馬に開放されるのは6月以降であるため、減量騎手の特例を除けば最低斤量ルールが発動する可能性も存在しない。

2023年より最低斤量は平地オープンで49kg、条件戦50kg、障害は3歳56kg、4歳以上57kgと定められている。制定当初は平地のみ現在より1kg軽く、オープンであれば48kgまで容認されていた。

なお斤量の上限は特に定められていないが、別定戦の解説の項で述べた賞金別定の青天井を除けば63kgを超えることはまずない。ハンデ戦ではハンデキャッパーが重くなりすぎないよう調整ないしは妥協するし、賞金別定を除くその他の決定方式でもそれほど大きな数字は理論上出せないためである。過去には70kgを超えるような酷量も記録に残るが、アイドル馬テンポイントの事故(ハンデ戦の日経新春杯で66.5kgを背負って故障。ただし酷量が原因ではないという見解もある)などを契機に緩和が進んだと言われている。

減量騎手の特例は重賞を含む特別戦には適用されない。